コラムCOLUMN

歯周病から始まる緑内障ドミノ

正常眼圧緑内障(NTG)は、まず全身に何らかの慢性炎症性基礎疾患(歯周病・腸炎・肥満・脂肪肝・糖尿病など)によって、神経毒(異常タンパク質)が生成されて神経細胞が死滅していく病気です。眼局所では、視神経の通り道である篩状板(眼球から出たすぐの場所)と周辺組織がAGEs(最終糖化産物)によるコラーゲン架橋の変性によって篩状板が変形してしまって視神経線維が障害されているものと考えます。

このように、歯肉の炎症に端を発して、炎症物質や歯周病菌が全身を巡ることで、さまざまな病気が引き起こされている事実を「緑内障ドミノ」と名付け、緑内障を良くする(または予防する)ためには、口腔内の環境をまずは良くすることが、緑内障治療の1丁目1番地であると患者さんにお話します。

私たちの身体には、約1,000種類(数にして1,000兆個)もの細菌たちが共生しています。重さにして約2kgにも及ぶ量の細菌が身体に存在しているわけですから、その細菌の質やバランスによって私たちの健康状態は変化します。細菌が最も多く住んでいるのが「口と腸」です。口と腸は1本の管で繋がっています。そのため、口の中が不衛生で雑菌が繁殖している状態だと、その雑菌を飲み込んで腸へと届いてしまいます。つまり、口腔内が不健康だと腸も不健康となり、逆に腸内環境(腸内フローラ)を良くしたければ、口腔内の環境(口腔内フローラ)を良くすることが大切になるということです。眼という特定の臓器や部位だけを診るのではなく、患者さんの家系的背景、食生活や生活習慣、仕事の内容や抱えるストレスなどを把握しながら個々人に則した治療や予防を組み立てることがNTG治療では必要です。

緑内障ドミノの1枚目(病気の始まり)は歯周病にしていますが、病気が発症する一番の原因は、正しい知識・正確な情報の不足だと思えます。人体はまだまだ謎だらけで解明されていないメカニズムがたくさんあります。世界中の研究者の方々が日々研究を重ねて少しずつ色々なことが明らかにされてきています。そういった新しい知識を常に敏感に汲み取って、患者さんに正しく伝え、炎症のない健康な身体が常に保てるように、眼科以外の全科に受診を促すこともNTG治療の重要な一部であると考えます。

コラム一覧に戻る