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日本は認知症大国! そしてNTG発症大国!

正常眼圧緑内障(NTG)は神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病など)の1疾患に分類されます。神経変性疾患は、タンパク質の異常な凝集と蓄積が疾患の発症に深く関わっていて、異常タンパク質蓄積病と表現されます。

こうしたことから、アルツハイマー病(AD)にはNTGが多く合併しているのではないか? 他の緑内障(例えば高眼圧の原発開放隅角緑内障 ; POAG)とは異なり有意に合併しているのではないか? と想像しました。そこで私は、ADの治療で有名な『お茶の水健康長寿クリニック』の白澤卓二院長https://ohlclinic.jp/profile.htmlのご協力を得て、AD患者153名(2/29日現在)の視神経乳頭の眼底写真を拝診し、約60%以上のAD患者においてNTGを合併している事実を確かめることができました。

外国文献では、ADとNTGの合併率は25%という報告が多く、POAGを含めると有意差が出ないという報告もあります。白澤先生と私のあいだでは「NTGはADの一症状である」という考えに至るような高率な合併の結果でした。こうした事実から、異常タンパク質が脳細胞に溜まる人が認知症となり、運動神経系に溜まる人はパーキンソン病となり、視神経に溜まる人はNTGになるのではないかと思われます。

異常タンパク質蓄積病では、疾患ごとに特徴的な異常タンパク質がみられます。ADではアミロイドβやタウ、パーキンソン病ではαシヌクレイン、筋萎縮性側索硬化症ではTDP-43といったタンパク質が細胞内で不溶化・蓄積し、異常な凝集体を形成しています。NTGでは、網膜神経節細胞内にアミロイドβやタウなどが蓄積されているという報告があります。ただ、異常タンパク質はとても種類が多く、例えばレビー小体型認知症のレビー小体を調べると、なんと90種類以上もの異常タンパク質が検出されています。アミロイドβやタウといった異常タンパク質は代表的なものであって、それが疾患原因の全てではありません。まだ特定されていないタンパク質もこれから見つかってくると思います。現時点で認識しておくべき重要なことは、正常で健康な神経細胞には異常タンパク質は見つからず、傷害を受けた不健康な神経細胞には異常タンパク質が存在しているということなのです。


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